船橋市
小湊鉄道×石井食品がタッグ! 市原産栗、炊き込みご飯のもとに
小湊鉄道(市原市、石川晋平社長)と食品加工メーカーの石井食品(船橋市、石井智康社長)は2日、身近な食材を活用した里おこしの一環として、市原市南部の加茂地区で採れた栗を加工し、家庭で簡単に楽しめる炊き込みご飯のもとを商品化したと発表した。
地域の食材を生かした商品の開発を続ける石井食品が、駅前へのキッチンカー設置で連携してきた小湊鉄道と再びタッグを組み、新たに始めた里おこしの取り組み。第1段では、自家消費かイノシシの餌になることが多かった栗に焦点を当てた。
加茂地区で収穫された栗は、里見駅で活動する団体「喜動房(きどうぼう)倶楽部」を経由し、石井食品で加工。収穫から調理までの時間が短いため、食品添加物が不要になり、甘味や風味、食感のバランスが良い“里山の恵み”のおいしさを最大限に引き出した商品になったという。
市役所ではこの日、両社と市、関係団体による記者会見が開かれ、石川社長は「鉄道からスタートした会社だが、会社の目的は里おこし」と地域活性化に期待。石井社長は「おいしいものが作れるとわくわくした。市の盛り上がりに貢献できれば」と力を込めた。
数量限定販売で、価格は1袋(2合用)税抜き850円。石井食品の直売店や通信販売で取り扱い中で、今後、小湊鉄道の一部の駅や都内の百貨店などにも並ぶという。
石井食品(本社:千葉県船橋市、石井智康社長)は9月20日から、今年採れたばかりの日本各地の栗を使い、地域ごとの味を再現した「栗ごはんの素」を期間・数量限定で発売している(なくなり次第終了)。
秋の味覚の栗だが、「栗ごはんの素」のような加工食品で採れたての栗を使い、旬の時期に製品として販売するのは容易ではない。栗の皮むきは重労働で、人手やコストの関係から、加工品に必要な量を国内で短期間に処理することは難しいためだ。
通常は国産栗であっても一度、中国などの海外に輸送し現地で皮むき後、再度輸入して最終製品に加工するケースが多い。コスト面では海外での一次加工が有利とされるが、日本から中国に船で運び、現地で処理して国内で製品化されるまで、最低でも1-2ヶ月はかかる。旬の栗を使った「栗ごはんの素」はもとより、年末の栗きんとんもすべて新栗を使うのは難しいのが現状だ。
機械では取りきれない渋皮(上)と手作業で美しく形を整えられた栗
国内で栗剥きから一貫製造 輸送ロス短縮し鮮度と品質向上
こうした中で、石井食品では「鮮度の良い栗をお届けしたい」という想いから、5年前に栗むき作業から調理加工まで、自社一貫製造の生産体制に切り替えた。これにより、製造時のリードタイム短縮化による鮮度やおいしさの向上に加え、全工程を自社で“見える化”することで安心・安全の強化にもつながっているという。
一般的な栗加工品は、砂糖で味付けした色鮮やかな黄金色の栗甘露煮を連想するが、同社の「栗ごはんの素」の栗は、色目が薄いのも特長。着色料などの食品添加物を使用しない無添加調理で、栗本来の風味や色合いをそのまま生かし、ホクホクとした食感とシンプルな味わいに仕上げている。
9月下旬、秋の訪れとともに石井食品の八千代工場(千葉県)では、栗の加工作業がピークを迎えていた。近隣の成田をはじめ、茨城・笠間、埼玉・日高の各産地から毎日のように収穫したばかりの栗が運び込まれる。
栗は専用の機械で外側の硬い鬼皮を処理後、最終的な仕上げはすべて手作業で行われる。ベテラン作業員がボウルに入った栗を一粒ずつ手に取り、品質を確認しながらピーラーで残った皮を剥き、すばやく形を整える工程は同社の栗製品へのこだわりを象徴している。
皮剥きされた栗は冷水に漬けた状態のまま調理工程に運ばれ、自社でとった出汁や粗塩、地酒などの調味液で味付け・加工工程を経て、「栗ごはんの素」として出荷される。おせちの栗きんとんも自社で甘露煮に炊き上げ、お正月を彩る一品に仕上げている。
「栗ごはんの素」
9月下旬から期間数量限定で発売している「炊き込みごはんの素 栗ごはん」シリーズ(常温保存、賞味期限60日以内)は、「茨城笠間」「埼玉日高」「千葉成田」「京都京丹波」「岐阜山県」「熊本やまえ村」の6品。産地や品種によって味わいが異なる各地の栗にあわせ、その地域の出汁や地酒で仕上げた一品だ。1袋2合用で、直売価格は税込918円~1千458円。自社通信販売(ダイレクトイシイ)のほか、一部の百貨店や高級スーパー等で期間限定販売している。
茨城笠間の栗ごはん(イメージ)
地域との連携強化
石井食品では16年8月に「地域と旬」の取り組みを開始。全国各地の産地と連携し、「栗ごはんの素」以外にも「淡路島の新玉ねぎが詰まったハンバーグ」やスープなど、現在まで約30の地域と取り組んだ加工食品を開発。道の駅や地元スーパーで販売し、地域対応の取り組みを強化している。
6次産業化の取り組みは全国で進んでいるが、商品開発力や加工技術、販路開拓などの面で課題も多い。食品メーカーも差別化策として産地との連携強化を進めているが、生産ロットとの兼ね合いなど、クリアすべきハードルは高い。大手メーカーでは対応が難しい一方、地域の中小メーカーでは販路が限られ、全国ネットの対応が難しいのが現実だ。
こうした中で、石井食品では国内3工場(八千代、京丹波、唐津)の立地性も生かし、原料調達や商品開発力など産地との連携を強化。多品種少量生産への対応や、素材を前面に打ち出した期間限定商品の販路開拓などの取り組みを進めており、食品メーカーによる地域活性化策としても注目される。